香港失踪事件 中国は弾圧の手伸ばすな

發佈時間 : 2016-1-24 18:56:13

– 産経ニュース

中国による人権弾圧の手が、「一国二制度」のもとで言論の自由が保障された香港にまで伸びている、と危惧せざるを得ない事態である。

中国共産党や国家指導者を批判する書籍を扱う香港の書店関係者5人の失踪事件のことだ。

中国が不当に拘束したことを疑う香港市民らが抗議デモを起こし、香港記者協会も中国当局に質問状を出した。

だが、中国側は5人のうち2人が国内にいると認める以外、納得のいく説明をしていない。底知れぬ不気味さが浮き上がる。

こんなことが許されようはずもない。中国政府は直ちに疑惑に答えるべきである。

5人は全員、香港の繁華街にある「銅鑼湾書店」の関係者だ。不可解なのは、中国国内にいるとされる2人の不自然な動きだ。

昨年10月に行方不明となった同書店株主の桂敏海氏について、中国国営通信社は「交通事故の罪を償うために出頭」し公安当局が拘束していると報じた。香港の中国系テレビ局は、桂氏が「(中国に出頭した)自分の判断を尊重してほしい」と語る映像を流した。

中国当局を代弁するような、これらの報道は信用できない。

中国国内では昨年、民主化活動家ら100人以上が拘束される大規模な弾圧があった。そうした際に「罪」をテレビで自白させるのは当局の常套(じょうとう)手段である。

昨年12月末に失踪した別の株主で作家の李波氏に関しては、広東省の公安当局が香港警察に「内地にいる」とだけ連絡してきた。

1997年の香港返還で中国が国際的に公約した「一国二制度」は司法の独立を含む「高度な自治」を香港に認めている。書店関係者に問題があったとしても香港の法律で裁かれねばならない。

習近平政権は、中国共産党が認めない思想の「主張」も破壊行為と見なせる反テロ法を今月から施行するなど、治安関連の法律を乱発し、国内監視を強めている。

李氏は英国籍、桂氏はスウェーデン国籍を持つ。英外相は情報提供を求めたが、中国外務省報道官は「香港のことは中国の内政問題だ。干渉はできない」と述べた。国際常識から外れている。

共産党の強権支配が香港の自治を奪うことがあってはならない。中国国内の問題も含め、国際社会は、中国に人権状況の改善を求める声を強めるべきだ。