劉燕子—藍(あお)い雪は陽炎のように立っている

發佈時間 : 2016-5-4 10:54:28

藍(あお)い雪は陽炎のように立っている
      -天安門事件二七周年追悼-

こもごも時間のくぼみの闇で
君の蒼ざめたほほえみは蚕のように
白内障(しろそこひ)の眼の中で糸を吐く
今夜、錆びた俺の赤ワインの渦中で
一羽の蝶が嘶(いなな)きながら降り立つ
光に透ける
翅脈の鼓動で忘却が孵化する
春は轢き殺されたのです
夏の海は四分五裂に割れたのです
秋の狡い貪欲はまっ黒な歯でガリガリと秋自身を囓ったのです
子宮から生まれた稲妻は
雪橇(そり)に乗り沈黙の崖を疾駆したのです
君の潮騒の夢は黒く焼け焦げ
星の膿となったのです
暴風はホチキスの針を舞い上がらせ
唾液にまみれた恐怖の蠢(うごめ)きを
処刑したのです
天空では石榴(ざくろ)のような祈り声が流れるのです
地上では爛(ただ)れた陽光が言葉の舌を刺し貫いて
赤い蛆虫の標本となったのです
六月四日、君のいないバースデイの鍋の中に
灯影が凍り、囁(ささや)きは剥がれた皮膚のように
静かに崩れ落ちたのです
おやすみなさい
二七年間、君の一瞬のまなざしが樹液のスピードに乗り
鳴り響くのです
おやすみなさい
一枚の無垢の紙は墜落した世界を埋葬しなければならない
藍(あお)い雪は陽炎のように立っている
藍い雪は生を啄(ついば)む挽歌

劉燕子