– 産経ニュース
【北京=矢板明夫】中国本土から来た観光客が、一国二制度のもとで言論の自由が守られている香港で、本土では手に入らない権力闘争の内幕などの政治に関する「発禁本」を買って、友人らに配る土産とすることは以前からあった。習近平政権発足後、本土で言論統制がますます強化されてからは、香港の政治本がますます人気を博すようになっていた。
中国当局は税関などでの検査態勢を強化し、政治的書籍を没収してきたが、とても間に合わない状態だ。最近、中国の治安当局が香港で政治本を出版、販売する書店や出版社に直接圧力をかけることが増えていた。
習近平国家主席を辛口に論評し、米国に亡命している作家、余傑氏の著書「中国のゴットファーザー」を出版した出版社の経営者は広東省で拘束され、2014年に密輸罪で懲役10年の判決を受けた。
今回、銅鑼湾書店の関係者が失踪する理由は不明だが、香港メディア関係者の間では「習主席の女性スキャンダルについての本を出版しようとしており、中国当局はこれを必死に阻止しようとした」という情報が広がっている。
一連の失踪事件が香港の出版関係者に大きな圧力を与えたことは事実だ。民主系の出版社「開放」は1月に余傑氏の新書「習近平の悪夢」を刊行しようと計画していたが、急遽中止となった。同出版社の金鐘編集長は地元メディアに対し「失踪事件が起きたため、みんなが怖がっている」と理由を語った。